これまで幾度か地元の素晴らしいビジネスオーナーを本誌で取り上げさせてもらう機会があった。彼らは皆情熱的で、この街全体が成長するようにとコミュニティに貢献している人たちだ。こうした多くの中小企業の成功の陰には素晴らしい家族の支えがある。石川町で入村広師が夫婦で営むよつばベーカリーもその一つ。オリジナリティと創造性に富んだ様々な種類のパンを出していて、その多くに和風の特徴を盛り込んでいる。
よつばベーカリーに足を踏み入れてまず気付くのは、雰囲気の温かさだ。小さな店には焼きたてのパンが所狭しと並んでいるのだが、この温かさは何もオーブンの熱や焼きたてのパンの温かさだけではなくて、実はカウンターの向こうにいるフレンドリーな夫婦から醸し出される温かさも含まれている。オーナーの入村広師がパン作りの一切を担当し、妻の愛(まな)は接客を担当。二人が出会ったのは勤務先の都内のレストランだ。夫の広師はそのレストランに17年勤務した後、自分の店を持ちたいと思い、某ベーカリーでの修業を経て独立。昨年12月によつばベーカリーをオープンした。元々東京で暮らしていた入村夫妻だが、愛の実家が横浜ということもあってこの街に移り住むことを決断。「ここへ来た当初、人との繋がりを余り感じられないと思っていましたが、今は全然違います。皆さん本当に優しいですね。ご近所さん、常連さん、お客様に可愛がってもらっています」。
本誌スタッフのお気に入りのパンを二つ紹介しよう。バターたっぷりの「メロンパン」と「きんぴらごぼうとチーズお焼き」。価格はいずれも180円。後者は白みそ、マヨネーズ、チーズであえたきんぴらごぼうサラダが中に入っている。クリームパンダ(¥100)の中はカスタードクリーム、表はざらめをまぶしたパンダの顔。クランベリークリームチーズ(¥260) は柔らかくもっちりとした生地と甘いドライクランベリーにクリームチーズを加えたもの。秋らしい大学いもデニッシュ(¥260)はたっぷりのスイートポテトペーストの上に大学芋がゴロゴロ乗っている。そして最後に、大きくて甘いレーズンをフレッシュな生地に練りこんだ王道のぶどうパン(¥180)。これはどんなジャムやバターにもよく合う。
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このように一生懸命仕事をするのは、お客様に喜びを広めたいという入村の強い気持ちがあるからだ。「お客様にも明るく、元気よく、楽しい気持ちをお伝えできるように」「お客様が笑顔になるような雰囲気のお店にしたいですね」という入村。「だから、一日でも長くこのお店を続けたいです。家族やお客様、今まで関わった全ての人がずっと笑顔でいられるように」