前号で我々はジョセフ・アマト氏を紹介した。今回は彼の新規事業7artscafeを具体的に紹介しよう。カフェの詳細は別ページで紹介することにして、ここでは7artscafe起業のコンセプト、そして最終的に目指している姿を紹介したい。そして、その目指している場所は、カフェという枠組みを超えた、横浜の様々な芸術文化の楽しみ方を変革させる、そんなコミュニティースペースだ。
アマトのアイデアは、1950年代にニューヨーク在住の詩人やアーティスト(その多くがサンフランシスコへ移住する前)が興した社交の伝統、ビートジェネレーションからインスピレーションを得たという。実際に、ニューヨーク大学のあるソーホー地区に、彼らの活動の拠点でもあった7 Arts Coffee Galleryは実在していた。「その場所は私がNYUの学生だった当時、まだそこにありました」。アマトは続けて「そして私は舞台芸術、音楽、ダンス、詩など人々が感性を共有できる場所を作りたい、そういうヒントを得たのです」とアマト。
もちろん横浜全体でみると多目的スペースなるものはいたる所にある。しかしアマトが目指すのは、さらにダイナミックで新しい企画を着実に、もっと身近で没頭できる場所を指している。前回記載したように彼は芸術文化の為のNPO法人、日本文化振興マネジメント(英:Japanese Culture Promotion and Management。略称JCPM)を設立した。「それは建物の無い大学のようなものです」。アマトは続けて「今までは」と笑みを浮かべる。
すでにアマトは、横浜を拠点としているNPO法人ダンスアーカイヴ構想(英: Dance Archive Network略称DAN)と活動している。それは国際的にも有名な芸術作品を残し、海外でも舞踏(Butoh)という新たな舞踊スタイルを確立させた芸術家、大野一雄が開設した大野一雄舞踏研究所が母体となっている。近い将来、我々はDANのパフォーマンスやワークショップをより身近で体験できる日が来るだろう。アマトはまた新たな試みとして、金曜の夜に独立系の実験映画を放映する企画をしている事を明らかにした。彼はこう付け加える。「携帯から離れて、映画の話に耳を傾ける、そしてそこから刺激を受ける、そういう場を作りたいのです」
この4年間、アマトはワークショップや講演会、シンポジウム、世界中の教育プログラムの主催者としての活動も続けている。それらの講演者もいずれ7artscafeでお目見えするだろう。「ここ半年間で、7artscafeの話題を通して出会った人々と交わした名刺が、膨大な数になっています」と彼は笑う。これからも彼の能力はいかんなく発揮されるはずだ。
それらは、日本に実在しているアートスクールに匹敵するような“大学”とも言えるだろう。でもそれも悪くない。 横浜はこれまでも芸術と文化が交わる交差点であり続けてきた。しかし、今やそれらを超越した空間を実現しようとしているのだ。