先日、中華街のスタジオから野毛のオフィスへ移動中、コーヒーが飲みたくなり馬車道のスターバックスに立ち寄った。車を止めてエンジンを切ると、それまでは気が付かなかったピアノの音が聞こえてきた。ストリートピアノだ。(横浜市に住む人なら市内の様々な場所に配置されたピアノに気づいた事があるだろう。)
緊急事態宣言発令中なので人通りもなく、閉店間近の店内も客は少なかったが、ピアノの音色は店の奥まで聞こえていて、皆じっと聴いているようだった。ヘッドフォンの片耳をずらし、目を瞑ってパソコンの手を止めているショートヘアの女性が印象的だった。
写真のジャンルに「ストリートスナップ」と呼ばれるものがある。以前フィルムメーカーの広告がきっかけで「ストリートスナップ」における人権問題の是非が、世間で問われたことがあった。そしてそれは、未だに答えが出る気配すらない。
ピアノの音色は受け止めればいい、演奏者との関わりは空気の振動だけだ。一方ストリートスナップは他人が被写体となり、その被写体が写真として何かを語る。それが被写体の意図としない、作家の意図するものとして。
他者との関わり、それが写真の面白さと難しさでもある。