横浜随一の飲食街である野毛は、新旧問わず気軽に入れる飲み屋が建ち並ぶ、大衆酒場の集まりという印象が強いだろう。しかし、その中には良い音楽とこだわりの酒をゆっくりと楽しめる個性的なバーも存在している。そのひとつに、レコードとメスカルのバー「rotary」がある。
メスカルというのはアガベ(リュウゼツラン)を主原料とするメキシコの蒸留酒で、テキーラが1種類のアガベから作られる酒を指すのに比べ、メスカルは品種の縛りがないため、テキーラの母と呼ばれている。筆者もメスカルを口にするのは初めてだったが、初心者におすすめの銘柄「サンコスメ」のソーダ割(¥1100)は、スモーキーさはあるもののクセが無く、飲みやすかった。
オーナーの内田大樹は北海道旭川出身で、横浜に来て6年目だという。元々音楽が好きで道内のレコードバーで働いており、修行のため横浜にやってきた。2022年にrotaryを創業する前は野毛のアフロタコスで3年間ほど勤務し、そこでテキーラやメスカルにハマっていった。内田は「アガベは収穫までに約5年かかります。メスカルになるまでのドラマに惹かれました。もちろん味も好きで、原料がアガベ100%のナチュラルなお酒なので、体への負担も少ないのです」とメスカルへの思いを語ってくれた。
本来は北海道でバーを開店しようと考えていたが、野毛には老舗のジャズ喫茶やソウルバーはあるが、ジャンルレスの良い音楽を純粋に楽しめるようなバーが無いと気づき、自身で開こうと決めた。棚に並ぶレコードはジャンルを問わず、内田が良いと思ったものを集めており、客のリクエストではなくその日の気分で流している。音響にもこだわっており、不定期開催のDJを招いて行うイベントでは、歌謡曲からジャズまで多種多様な音楽が流れる。客の年齢層もバラバラだ。メスカルは基本のストレート、ソーダ、ロック(¥900〜)といった飲み方以外にも、オリジナルカクテル(¥1200〜) でも楽しめる。メキシコの文化に触れながら音楽に酔いしれ心地よい時間を過ごす。新しい野毛の楽しみ方がrotaryにはある。