ゆるやかな坂道を道なりに進んだ先に、753(なごみ)エリアとして、日本家屋の多目的スペースや、店舗やギャラリーなどが集まる一帯がある。定期的にマルシェなど協賛イベントも開催されており、地元の人々から親しまれている。その中に樹齢100年近い大きな桜の木がシンボルツリーの、古民家を改装した発酵料理カフェ「菌カフェ753」がある。オーナーの辻一毅はフランス料理で20年以上経験を積んだシェフだ。
料理の修行をしながらフランスに滞在していた時、日本の食文化の魅力とは何だろうと見つめなおしたという。日本には古くから伝わる伝統調味料の醤油がある。帰国後に醤油の醸造過程を見せてもらい、日本の風土に適した「発酵」の過程を目の当たりにし、その奥深さにのめりこんでいった。醤油・味噌・麹など発酵調味料は、すべて自家製で時間をかけて熟成させている。料理に使用する有機野菜も、生産者との出会いや野菜作りへの思いを大切にし、栄養価の高い旬の野菜を多く使用。実際に辻自身も畑で野菜を作りたくてこの土地に引っ越してきたことが、菌カフェ753のオープンにつながっているという。
基本メニューは一汁三菜(¥828)、一汁五菜(¥1139)で、本日のお肉かお魚のセットメニュー(¥369)を選択する。食前には季節の甘酒や、発酵作用による微炭酸のスパイスレモネードなど、特製発酵ドリンクがおすすめだ。デザートの米粉のシフォンケーキは、日替わりで自家製味噌、しょうゆ、レモン、バジルなど4種類の風味から選べる。豆乳・甘酒・自家製酵素シロップを加えた特製のソフトクリーム(菌クリ ¥369・菌パフェ¥1506)、季節のヴィーガンケーキ(¥700~)など。それらはすべてテイクアウトも可能だ。
庭の桜の古木が魅せる春の情景が目に浮かぶ。秋はもみじの葉っぱが真っ赤に色づき、食事を楽しむ人々の目を奪うだろう。周辺が木立に囲まれているため、通気性が良く自然素材が多く使われた日本家屋の造りは、夏も比較的過ごしやすい。冬は囲炉裏に炭を焚いて暖を取るという。そんな自然美が味わえる昭和レトロな空間で、じっくり時間をかけて育てられた日本古来の発酵食材をつかった料理と向き合うひとときを、ぜひ堪能したい。