パン屋のオヤジは不思議な店だ。その店名から、頑固一徹みたいな顔をしたおじさんが、黙々と昔気質なパンを焼いている姿を想像してしまう。ところが一歩店に入ると、まずは数えきれないほどの種類のコッペパンが可愛らしく整列した様子に圧倒される。いちごクリームにキャラメルムース、フレッシュな果物にタンドリーチキンまで、五感を刺激するトッピングのパンがずらり。そして笑顔の素敵なスタッフと共に迎えてくれるのは、店内に流れる謎のコッペパンソング!頑固そうなおじさんの姿は見当たらない。
パン屋のオヤジが根岸駅前にオープンして約1年。このコッペパン専門店から誕生したメニューは、なんと約350種類というから驚きだ。食材の入荷状況などに合わせて、毎日約80~100種類のメニューが店頭に並ぶ。「一つ一つのパンがアイドルのようなもの。丁寧に盛り付けて、行っておいで!と送り出しています」と話すのは、K2インターナショナルグループ飲食部門統括責任者の鳴海加奈子。人気メニューはシンプルに素材の味が楽しめるカスタードやあんこ。メンチカツやフィッシュフライタルタルなど、ボリュームのあるラインナップもお勧めという。
K2インターナショナルグループは、引きこもり等で悩む若者の自立や就労を支援するプログラムを提供しており、パン屋のオヤジで活躍するスタッフも約8割がその卒業生だという。若手スタッフ達のはつらつとした笑顔を見ると、今が充実していることがよく分かる。
作り立てのコッペパンをすぐに食べたい場合は、開放的なテラス席で楽しむことができる。平日はフレーバーティー、土曜日はコーヒーが無料で提供されている。ちなみにパン屋のオヤジという店名は、パン屋と金魚が登場するフランス民謡から取られたそうだ。金魚好きのオーナーがこの名前に決めて、オリジナルソングまで作ってしまった。しかし店に金魚はいない。パン屋のオヤジは、やっぱり不思議で、そして素敵な店だ。