横浜には長い年月を経てもなお残っている年季の入った小さな喫茶店や飲食店が数多く存在している。運がよければ、思いがけず素敵な隠れ家を発見することもある…例えばナギコーヒーのような。横浜駅の喧騒からほんの数分離れた松本町に静かに佇むこの小さな可愛らしいカフェは、アンティークショップも入っている素敵な赤レンガの建物の1階にある。お店で出されるフードメニューはどれも美味しくて量もたっぷり。居心地良く、どこかノスタルジックな雰囲気が漂う。そしてもちろん、コーヒーのクオリティは最高だ。ナギコーヒーはどこから見てもバランスの取れた数少ないカフェの一つ。この店の温もりと落ち着きーそれが一体どこから来ているのかは、この店のオーナーであるフレンドリーな中村公平・みるき夫妻に会えば納得する。
中村は長年老舗自家焙煎珈琲喫茶に14年間勤めていたが、古き良い喫茶店が次々と無くなって行くことに危機感を覚え、少しでもその傾向を食い止めようと自分で店を開く決心をした。彼が生み出したオリジナルのナギブレンド(¥450) はその努力と献身の証だ。とてもバランスがよく芳醇な香り…シンプルでありながら深みのあるナギブレンドはこの店でなければ味わえない一杯だ。ミルクも砂糖も必要ない。仕入れている4種類の豆の特徴をより生かすために、オーナーは敢えて焙煎日をずらしている。「味わいのピークは焙煎してから2日前後で表れます。そのピークのズレによる心地よいハーモニーを、その日ごとに新鮮に味わうことが出来るのが『ナギブレンド』の面白さです」と中村は言う。「お店の顔となるブレンドは、毎日の生活に寄り添うことができるコーヒーにしたいと思い、試行錯誤しながら作りあげました」
カフェの魅力はコーヒーだけでは終わらない。玉子サンド(¥400、ハーフサイズ) とアボカド野菜サンド(¥450、ハーフサイズ)には新鮮な野菜もたっぷり(いずれもフルサイズ有り)。後者のサンドは人参のピクルスがちょうど良い甘酸っぱさとシャキシャキ感を加えている。キャロットチーズケーキ(¥450) はシナモンの香りと風味が利いており、人参がクリームチーズとよく合う。シナモントースト(¥350、ハーフサイズ)もぜひトライしてほしい一品だーホイップクリームがたっぷりのっている割に甘すぎず、さっぱりしていてペロリと食べてしまう。
美味しい食べ物やコーヒーの先にあるものーそれは中村と妻みるきのお客さんに対する温かい思いやり、また古き良きものを残していくことへの熱意だ。そして、それがナギコーヒーの核となっている。「ナギコーヒーがオープンして約3年の間にも、地元で愛されてきた喫茶店が無くなるのを見てきました。横浜の街は開発され便利になってきていますが、その便利さと共に、商店街のような地域に根ざした温かさを残し続けていきたいと思います」。だが、街が変わっても「お客様を通して見える地元の温かさは変わらない」と中村は言う。「喫茶店に必要なものは美味しいコーヒーはもちろんですが、お客様にとって居心地が良く、寄り添うことができるような空気感が大事だと思います。コーヒーや料理を提供したあとも、お客様を感じてサービスすることがマスターとしての仕事だと思っています」。今後の目標や願いを聞くと、次のような答えが返ってきた。「ナギコーヒーはまだまだ新しいお店です。お客様とこのナギコーヒーの店舗でたくさんの時間を重ねることで、三世代に渡るくらいの老舗喫茶店に成長して、素敵な空気感をもったお店にしていきたいです」。