霧笛楼は横浜でも抜きん出て素敵な食体験を提供してくれる。「霧笛」という言葉は、濃霧の際に衝突事故を避けるために鳴らされる汽笛のことで、港町・横浜のアイデンティティを象徴している。「楼」は文字通り「階が重ねられた高い建物」を意味し、「大邸宅」とも言えよう。1981年の開業以来、霧笛楼は街のランドマークとしての地位を確立してきた。オーナーであり、この地で生まれ育った鈴木信晴社長は、ゲストにお金では買えない思い出を創り出すことを心がけている。
ここは、あらゆる面で和魂洋才というコンセプトを取り入れている。横浜を代表する浮世絵師・五雲亭貞秀の木版画といった素晴らしい和の芸術作品が飾られていて、そこにヴィンテージの食器類やアンティーク風のシャンデリア、ステンドグラスの窓といった開港当時の「洋」のテイストが融合されている。
地元の最高品質の食材を使い、一流のフレンチ料理を創り出すことが自慢の霧笛楼。グランドメニューは年に4~6回、その時期の食材によって変更される。秋のランチコース(3800円)では、素晴らしい品々が提供された。オマール海老のタルタル 蕪のブランマンジェとビーツのブルーテは、コース料理の前菜として申し分なかった。メインディッシュからは、神奈川県産やまゆりポークロース肉の網焼き 牛蒡風味の黒胡椒ソースとじゃが芋のグラタンは得も言われぬ味わい。2種・フロマージュ・カクテルグラス詰め 赤ワインとフワンボワーズのソースは締めくくりにぴったりのデザートだった。
ワインをこよなく愛する人であれば、霧笛楼はうってつけのレストランだろう。きちんと修行を積んだソムリエを3人擁し、感動的なワインとシャンパーニュのセレクションを誇る。シェフは一人前になるまでに最低3年以上の見習い期間を経ている。また、フロアスタッフの接客も一流で、中には英語が話せる人もいる。