ある街にこんな図書館があるという。意匠的建築の屋内は、楕円形のカーブを描く書架がゆるやかなスロープで各階へとつながる。そこにはさまざまなジャンルの本が陳列され、建築に沿って本を眺めて歩き回るだけで、新しい知識と出合いがある。ラジオもそうだ。家事や通勤時間など耳からの情報に身をゆだねていると、気づきや共感といった第三の視点と出合うことがあるだろう。
FMヨコハマ(84.7MHz) の、ラジオDJとして活躍している宮澤光邦(以下通称:光邦さん)。デビュー以来28年間、生放送が途絶える事のない人気DJだ。現在は、月曜から木曜の朝6時から9時『ちょうどいいラジオ』でパーソナリティーを務めている。ラジオの一番の魅力について聞くと、こう話してくれた。「ちょっとした変化が毎日いっぱいあります。番組はただのプラットフォームで、そこにいろんな人が集まって、みんなで共感して助け合う。たとえば、育児ノイローゼになりそうです。というコメントが届いたら、同じ経験をしたリスナーから、みんな通ってくる道だから大丈夫だよ、苦しいって言えることが一番大事だよ、といったコメントが寄せられ同じ目線で共感しあえる。それが最大の魅力です」。全体にポジティブなムードで番組のテンポ感を生み出しているのは、光邦さんの言葉の持つパワーだ。また、このようにも語る。「ありがとうの話など、良いテーマはなるべくたくさん取り上げています。テレビとは違いラジオは、心のメディアだと思っています」。
瀬谷区の福祉施設で、書道家の粟津紅花と光邦さんのコラボイベントがあると聞き、せや活動ホーム太陽を訪れた。視覚障がいのある方にとって、ラジオは重要な情報収集手段だ。普段から光邦さんのラジオ番組を楽しみにしている多くの人びとと出会い、嬉しそうな姿にこちらまでワクワクしてくる。光邦さんはいつも心がけていることがあるという。自分が伝えたいメッセージは、きちんと伝えること。解決がたとえ難しい内容でも「難しいよね」で終わらせたくはない。なぜなら、そう言った瞬間に思考がストップしてしまい、そこから先を考えなくなってしまうから。
言葉のプロフェッショナルとしてマインドにブレない軸がある。そんな光邦さんに、二十歳の時のエピソードを教えてもらった。成人式が終わり帰宅すると、机の上に父親からのメモと黒革の手帳が置いてあった。「自分が光邦の父親になったときから、新聞記事や本、人から聞いた話で、良かったと思ったことを、書きなぐった手帳だ。これはもう自分には必要ないから、光邦に渡す」いつの日か伝えたい大切な息子への思いを、集めた言葉で紡がれた手帳。「言葉」の数々が真っ直ぐ心に響いて涙でぐちゃぐちゃになった。その中の、子どもの育て方というページに、こう書いてあったという。それは今も、ちょうどいいラジオのモットーになっている。
難しいことを やさしく
やさしさを 深く
深いことを おもしろく