今年もあっという間に12月になってしまった。THE DARKROOMを開いて20回目の12月だ。本当に年々時間の過ぎるスピードが加速していると思う。
そういえば開店当初は、「なんで今さら、貸暗室をオープンさせるのですか?」という電話があるほど、カメラ業界がデジタルに移行し始めたタイミングだった。
モノクロ写真が好きだということ、暗室作業が好きだということ、重森弘淹を尊敬しているということ、鈴木清が好きだということ、その他いっぱいの理由があって、オープンさせたので、「なんで今さら……」という質問に答えるとすれば、「楽しくて我慢ができなかったから」(大笑)
今、思い起こせば色々な出会いがここ(THE DARKROOM)であった。20年という時の流れの中には他界した人もいる。その人達は、30代そこそこの小僧(俺のこと)の語る理想に共感(?)し、法人化に協力してくれたり、人脈を繋げてくれたり、人生の先輩として色々なことを教えてくれたりした。今考えてみると、もしもその人達がいなければ今のTHE DARKROOMは無いだろうし、俺自身も今以上にイヤな野郎になっていたと思う。本当に感謝している。
その人達皆に共通していることがある。それは、皆、心の底から写真が好きだということだ。ある人は遺言に自分の写真機材と写真を全てTHE DARKROOMに寄贈すると書いてあったらしい。俺は、ご家族が持っているべき写真と、そうでない写真を、何日かかけて仕分けをした記憶がある。
先日、訃報があった。彼の会員作業記録表を開いたらポストカードが一枚挟んであった。見てみると、写真の図柄は船の出初式だった。「さいとうさん、こんな時はね、初心に返ってみると色々見えてくるもんだよ」と、彼が俺に言っている気がした。
全ての「会員カルテ」はTHE DARKROOMが存在する限り期限なく保管される。そして、俺の心にも彼らは宝物として期限なく残る。