2022年に一般社団法人日本国際協力センター(JICE)が、スペシャルオリンピックスUAE(アラブ首長国連邦)女子ユニファイドフットボールチームを日本に招へいし、交流・親善試合を行う訪日プログラムを実施した。その対戦チームとして誕生したのが、日本知的障がい者サッカー連盟(以下JFFID)によって構成された、知的障がい者サッカー女子日本代表チームだ。スペシャルオリンピックスとは、知的障がいのある人たちに、様々なスポーツトレーニングと成果の発表の場である競技会を提供する国際的なスポーツ組織で、知的障がいのある人(アスリート)と、知的障がいのない人(パートナー)がチームメイトとなり、一緒にスポーツをする「ユニファイドスポーツⓇ」が基準となっている。今回はJFFID女子委員長であり、女子日本代表チームの監督を務める稲葉政行に話を伺った。
1.ルールや構成の特徴について、簡単にご説明頂けますか?
チームは中学生以上で構成されており、7人制の1チームに基本はアスリートが4名、パートナーが3名入ります。オフサイドが無いことや、ゴールキーパーはキャッチしたら全てスロー(手で投げる・転がす)でプレーするなど、独自のルールがあります。ベンチでは補助的に視覚教材を用いてポジショニング確認や修正をすることもあります。
2.UAEとの国際交流親善マッチの実施によって、知的障がい者サッカー女子の存在を社会へ広く印象付けることが出来たのではないでしょうか?
2022年のUAEとの親善試合で、本プログラムの継続と更なる発展が望まれ、2023年12月には、日本代表チームをUAEに派遣する国際派遣プログラムが実施されました。本プログラムの実施により、両国の女性の活躍を支援し、両国間の関係強化を図るとともに、障がい者サッカーの技術面の向上、SDGsの目標5にあるジェンダー平等の実現や、目標10の人や国の不平等解消への貢献も目指していきました。
3.海外遠征で得た経験はチームにとって大変有意義なものだったと思います。良かったこと/大変だったこと、それぞれ教えていただけますか?
良かったことは、ピッチ内で強い特徴を持った規格外の海外選手との対戦経験によって、組織として個の強みを生かすプレーの重要性や、日本人特有のストロング(勤勉さ・器用さ・俊敏性・連動性)を生かせたことが挙げられます。ピッチ外では、異文化での生活習慣への適応、海外選手との交流、公の場での対応(マナー・立ち居振る舞い)、保護者や支援者から離れた長期間の遠征経験が挙げられます。選手たちの適応力は高く、体調不良者や怪我人が一人も出なかったのも良かったところです。
4.大変だったことはどのようなことが挙げられますか?
大変だったことは、これまで計画的に物事を進めてきた我々日本人と違って、海外での生活はまさにその逆でした。例えば、当日試合直前に使用するピッチを知らされる、時間の変更や予定されていた通訳の不在、試合の審判を日本スタッフが急きょ担当することになる等、アウェイの良い経験となりました。また、コロナ禍で修学旅行が中止になった選手が多く、海外経験はおろか飛行機に乗ること自体が初めての選手がほとんどだったため、当日のメンタルケアはもちろん、準備段階からガイダンスにはかなりの時間を要しました。
5.医療や教育関係者からの視点ではなく、障がいを抱えた当事者の声が聞ける機会は限られています。可能な範囲で選手の感想を聞かせていただけますか?
UAEの選手たちは身体の強さやスピードの部分で違いを感じました。日本の皆さんへの感謝の気持ちとしては、関係者やスタッフの皆さんがいたからこそ、私達がここまで頑張れたと思っています。第3戦でスタンドから「ニッポン」コールをしてもらえて嬉しかったです。決定力やドリブルのスピードを極めて、次回も日本代表に選ばれたいです。(新田里緒選手・神奈川)
6.今後の目標を聞かせてください!
今後の目標は、UAEとの交流プログラムを継続しつつ、女子知的障がい者サッカーの世界大会を創出し、私達日本代表チームも世界に打って出る機会を実現させていきたいです。また、日本全国に女子を受け入れてくれる環境を増やしていけるように、国内の組織も整えていきたいと思います。資金面も大きな課題ですので、私達の活動に賛同していただけるパートナー企業様も募集しております。これまで多くの方々からご支援とご声援を頂戴し大変感謝しております。
チームの活躍を応援しています。ありがとうございました!