リー・リーブは、妻である吉岡リーブ真依子とともにインサイダージャパン合同会社を経営している。横浜に長年居を構えている2人は、2017年12月に「サイダーを広めるためのツール」として英日バイリンガルの季刊誌を発行した。そして2018年2月には同じ名前で同社を設立し、そこからサイダーの輸入販売も手掛けることになり、オーストラリアを筆頭に、米国、英国やフランスからも上質のサイダーを輸入している。
英国ニューキャッスル生まれでグラスゴー育ちのリーは、日本に住んで20年経つ。エネルギッシュで、見た目も若い(中年ではあるが30代後半に見える)リーが話し始めると、母国から離れて長年経っていてもなお残る彼のスコットランド訛りに気づく。彼と真依子はお似合いの素敵なカップルだが、今ではパワーカップル(影響力を持つカップル)になったとも言えるだろう。
『横浜シーサイダー』を長年読んでくれている読者なら、彼の名前には聞き覚えがあるかもしれない。およそ10年前、彼は本誌のディレクターを務めていた(本誌で得た雑誌発行の経験を活かして彼自身の雑誌を創刊したそうだ)。また、彼は名の知れたマジシャンでもあるので、彼のマジックショーを見たことがある人もいるかもしれない。とても親しみやすい性格の持ち主なので、外国人がいそうなバーに行けば、いつかリーに会うことになるだろう。彼はサイダーを広める活動を熱心に続けているので、いろいろなバーに足を運んでいるのだ(そして飲んでいる)。
なぜサイダーの世界に飛び込むことになったのかを尋ねると、「2015年くらいのとき、サイダーが復活の兆しを見せていると耳にしました」と彼は答えた。「先にトレンドをつかみ、日本の人々にサイダーを紹介するいい機会だと思ったのです」
彼は日本でクラフトビールのブームが起こるのを目の当たりにしていた。2000年代初頭、彼はひそかに自家醸造に勤しみ、ビールコンペや増加しつつあったクラフトビールフェスティバルにも足を踏み入れていた。その10年後、彼は日本にサイダーを広めるチャンスを目にし、その流れに乗るのには迷いはなかった。彼と真依子はサイダーの日本参入に一役買ったと言えるだろう。
インサイダージャパンを設立すると、彼の元には国内外のサイダーについて話をして欲しいという依頼が届くようになった。実は日本にも、まだ始まったばかりではあるがサイダー産業が形成されており、彼はメディアを通じてこのことをアピールしようとしている。リーによると、国内にはサイダーを生産する企業が数百あり、うちサイダーに特化してつくっている会社は5~6ほどだという。対して、サイダーのみ製造している企業は米国では1000以上、英国では480ほど、そしてオーストラリアは100を優に超えている。
海外の知り合いが増えていくうち、リーと真依子はサイダーの輸入をはじめることにした。2人は2019年のほとんどを、輸入販売に必要な免許の取得やウェブサイト上でのオンラインショップの立ち上げに時間を費やした。最初に輸入したサイダーはオーストラリア産のサイダーで、売り上げは上々だったので翌年への期待は高まっていた。そして新型コロナウイルスの感染拡大が起こる。
「サイダーを載せた次の積荷が届いたときには、おもな取引先が集まる東京は静まり返っていました」とリーは話す。
2人に限らず、多くの小売店や卸業者にとっても2020年は厳しい年たったが、彼らは生き延びることが可能なニッチな市場を見つけ、むしろ成長した。リーいわく、昨年は待機状態だったそうだが、今年は再び上昇気流に乗ることを期待している。
サイダー好きの読者、または興味がある読者はぜひ彼らのオンラインストアを覗いてみよう。または横浜にも彼らが輸入しているサイダーを味わえるお店がいくつかある。その中でも、ワールドポーターズ内の「ギャザーイーティングハウス」がおすすめ。暖かくなってきたら、テラス席に座って、世界各地の「リンゴが起こす奇跡の味」を堪能してみよう。
オンラインストア:ジャパンサイダーマーケット www.japancidermarket.com
インサイダー社が取り扱う商品は下記店舗にて提供している:
- TDM 1874(十日市場)
- りんごらいふ(青葉台)
- ノゲウエストエンド(野毛)
- インドゥ(元町)
- ビーチマフィン(逗子)
- ボデガ (川崎)
- イグドラジルブルーイング(平塚)