清水和友先生は、横浜を拠点に税理士として活躍している。日本語と英語両方での相談が可能で、長きに渡り横浜シーサイダーマガジンのスポンサーとしても支えて下さっている。我々は税理士の仕事を通してお金や人生にまつわる話を伺った。
良い税理士を雇うことで面倒な手続きを全て任せられるだけではなく節約につながる、つまり、依頼費を節約分で十分に賄えると言われていますが、これに関して詳しく教えていただけますか?
税理士を利用して合法的な節税を効果的に行うことが可能になります。
例えば、個人事業主の場合、青色申告という制度があり、納税者が青色申告を選択すると、事業所得や不動産所得から一定額を控除でき、納税額を減らすことができます。その控除額には10万円、55万円、65万円の3種類がありますが、簿記の知識の無い方が作成する簡易帳簿では10万円控除しか利用できません。
他方、税理士に帳簿作成を依頼する、あるいは納税者が作成した帳簿を税理士がチェックすることで、複式簿記による正確な記帳が可能となり、その場合は、55万円控除が利用でき、さらに、確定申告を電子申告で行うと65万円が控除可能となります。
相当年配の税理士でなければ通常は電子申告に対応していますので、自分で帳簿を作成して書面による申告をすると10万円しか控除できないところ、税理士が関与すれば65万円控除となり、その差額55万円は、その納税者の所得にもよりますが、税金を下げる効果が10万円以上となる場合があります。
加えて、税理士に支払う報酬も必要経費となりますので、節税の総額が税理士に支払う報酬のかなりの部分あるいはその額を超えて回収できることになります。
なぜ個人事業主にこそ、良い税理士が必要だとお考えですか?
帳簿の作成や申告書の作成は易しい部分もありますが、一部非常に専門的な部分も含んでいます。上記に示した複式簿記による記帳もそのうちのひとつです。
また、外国人の納税者の場合は、多くの場合国際税務の論点が含まれ、この分野の対応ができる税理士は非常に限られてきます。
このような部分については、自分で正しく行うことは不可能に近く、本業の遂行に大きな支障をきたします。また、大手の税理士法人に依頼すると非常に高額なうえ、機械的に処理されてしまうことも多いのではないでしょうか。
税理士としての観点から、読者の方々や個人事業主の方々が節税する上でアドバイスはありますか?
確定申告は毎年のことですので、意思疎通がしやすい相性の良い税理士を選ぶことが大切です。良い税理士とのお付き合いが長くなると、単に所得税の問題だけでなく、ご自身の将来の相続税の相談や、税金以外の相談ごとについても、信頼関係構築された上で幅広い相談相手を得ることになります。
逆に、気をつけるべきことはありますか?
税務調査はいつでもありうることですが、いい加減な申告を行い、税務署から指摘されると余計なペナルティー(加算税)を負担することになってしまいます。
また、外国人の場合は、在留資格審査において申請人の納税義務の履行は極めて重要な判断要素となっていますので、無用なトラブルを避けるためにも、きちんとした申告と納税が非常に大切になります。
簿記作成の仕事をする上で、個人的にやりがいを感じたケースはありますか?どのようなトラブルを解決しましたか?
あるヨーロッパ人の個人事業主のクライアントのケースです。その人は最初、領収書一式と、その内容をエクセルに整理して、定期的に私に提出し、私の方でその内容の修正をエクセルベースで行い、最後に複式簿記による帳簿作成を行ってきました。
最初のうちはエクセルでの売上及び経費の整理の仕方があまりまとまっていませんでしたが、私のほうで修正したエクセル表記にならって、その人の側で記載方法の改善がなされ、今では、非常に整理された一次データが提供されていて、双方ともだいぶ効率良く進めることができるようになりました。
また、経理データを図表で表すことで、クライアントのほうでも経営状況の変化が一目でわかるように工夫しています。そのサービスはクライアントから良い評価を得ています。
加えて、所得税の確定申告書は日本語で記載されますが、日本人でも記載の表現が専門的でわかりづらいため、確定申告書の表紙のページの英語版も提供しています。これは、いずれのクライアントからも良い評価をいただいています。
興味深いカルチャーに関する質問を一つ。金銭面で、日本人と外国人の考え方に違いはあると感じますか?
お金について、倹約的か寛容かは、人それぞれであり、国籍はあまり関係ないように感じています。
一方で、大きく異なる文化があります。日本人は専門的なアドバイスを提供するというサービスに対して対価を支払うという概念が弱く、情報は無料と思っている人すらいますが、私のお付き合いしてきた外国人の方はそうではありません。
たとえば、30分間のZOOMミーティングでの税務相談が終わると、日本人の場合はこちらか言い出さないと無料であると思っている人がありますが、外国人の場合は「このコンサルティングについての報酬はどの様に支払ったら良いのか?」と確認してきます。これは大きな文化的違いですね。
散財をした経験はありますか?また、何に使いましたか?
飛行機で国際線に乗るときは、できるだけビジネスクラスを予約します。マイレージでの利用もありますが、購入したときは「贅沢したかな」と思ってしまいますね。
「お金で幸せは買えない』というフレーズ、どう思いますか?
私は以前、2社の外資系企業に勤務しました。最初の企業では会社への貢献度に対して昇給が少なかったため、年収が1.5倍となる別の外資へ移りました。ところが当然ながら求められる内容は高度で、非常に厳しいものでした。振り返ってみると、収入は良かったですが、その分幸せであったかというと、そうではありませんでした。
幸福にはある程度のお金は必要ですが、お金のみを目標とすると依存症のようになってしまい、人生の本質を見失う危険があると思います。
仮に、突然100万円が手に入ったら、何に使うと思いますか?
その時の貯蓄の状況にもよりますが、仕事への投資(専門書の購入)、消費(旅行)、公益的な団体への寄付などでしょうか。
テキサス大学オースティン校で学ばれたそうですが、あの街での楽しかった思い出はありますか?
もう30年くらい前のことです。当時はまだスターバックスがありませんでした。そのかわり、毎日授業が終わると大学構内にあるドーナツ屋でドーナツとコーヒーを買って一息入れることが楽しみのひとつでした。