たまには街から離れたい? そんなときは箱根で爽やかな日帰りトレッキングはいかがだろうか? 朝食を食べたら出発し、夕食までに戻ってくることが可能だ。靴はスニーカーか登山靴をお勧めする。さあ、ピクニックに出発しよう。予算は4000円もあれば十分だ!
まずは風光明媚な箱根登山鉄道からスタート。バスのほうが速いが、鉄道の方がよりリラックスして楽しめる。都市鉄道の喧騒を通り抜けて広がる景色を堪能しよう。この鉄道では三か所でスイッチバックがおこなわれ、車両の進行方向が変わるため、車掌と運転士が外部の橋梁を歩いて入れ替わる様子も一つの見どころだ。
小涌谷駅で下車したら幹線道路を渡り、千条(ちすじ)の滝と浅間山の方向を示す案内板に沿って急なコンクリートの坂道を登ろう。10分ほど坂を歩き、別の案内板が出てきたら左へ。道がなだらかになり、コンクリートの舗装がなくなってきたら千条の滝に到着だ。もし“雄大”な絶景を期待していたなら、落差3メートルほどの千条の滝にはがっかりするかもしれない。しかし、精巧なミニチュアが好きな人ならきっと気に入るはずだ。何千本もの白い糸のような水の流れが、レースのカーテンのような繊細な文様を織りなし苔の岩を覆っている。千条とは「千本」の意味もあるのだ。
今度は平坦な木製の橋を渡って、30分ほど坂道を登ろう。10分から15分歩いたら左へ曲がる。この道沿いには浅間山の方向を示す標識が立っているので安心だ。ここから先は、ジグザグに山の北斜面を登るのだが、富士山とは対照的に、箱根のお椀型の山々は、登るほど勾配がゆるやかになっていく。20分ほど登ると、なだらかな丘陵に出る。少し下ると分岐点があり、山頂は右だと示す標識があるが、頂点に近づいた今、そこから先は簡単に頂上へ行くことができる。
山頂には芝生が広がり、ピクニックテーブルやバイリンガルの案内板が整備されている。海抜804メートルの頂点は場所によっては高いかもしれないが、箱根では小さいほうで、見渡す景色といえば周囲を囲む高い山々なのである。しかし都会の喧噪から離れてリフレッシュするにはうってつけだ。平日の昼間にこれほど静寂な場所は、ほかにはなかなかないだろう。
帰路は、案内板の隣の道に沿って下って行こう。箱根湯本駅までは2時間の下り坂だが、ちょっと心が折れそうな気がするなら、もう少し高い地点にある箱根登山鉄道の駅へ向かう2つのルートもある。一つは頂上から10分弱で着く宮ノ下駅への道、もう一つは30分ほどで着く大平台駅への道だ。
幅の広い下り道は、下って行くほど勾配がきつくなっていくと予想していたが、山のこちら側はそれほどでもなく、階段やジグザグ道が現れるまでの1時間ほどは穏やかな下り道が楽しめる。そうはいっても地面は滑りやすく、登山用の杖があったほうが安心だろう。山頂から1時間半で湯坂城跡の案内板がある。この案内板によると、ここに到着するまでに、何世紀ものあいだ箱根越えの主要街道であった湯坂路(鎌倉古道)を私たちも歩いてきたことがわかる。
道をさらに進むと、だんだん交通量が増えていき、最後には急勾配のコンクリート道になり、箱根湯本の北部の主要道路に繋がる。歩道橋につくまで右側に沿って注意深く歩き、歩道橋を渡ると街の中心部に出る。ここから箱根湯本駅へは徒歩10分ほどだ。箱根湯本には雰囲気のある古い温泉旅館や多くのカフェ、土産物店があり、横浜の喧噪に戻る前に一休みする場所としては理想的な中継地となっている。