内閣府の全国調査で、生産年齢人口の50人に一人が生きづらさを感じ引きこもり状態であるというデータがある。その要因は学校や社会の人間関係だけではない。コロナ禍の影響や、少子高齢化社会における介護離職など年齢層も幅広い。
根岸に拠点を置く「K2インターナショナルジャパン」は、35年前からそのような困難を抱える若者の自立支援事業を展開してきた。代表の金森克雄は、以前はヨット関連のベンチャー企業に勤めていた。その企業が実施した「学校に行かない子供たちをヨットに乗せて元気にしよう」という社会貢献活動の部門責任者として、不登校の子ども達と関わり始めたのがきっかけとなった。自分がこれまで当たり前にやってきたことが、そこで出合った親子にこんなに喜んでもらえるんだ! という新鮮な驚きと、今まで感じたことがないほどの充実感を味わったという。その経験は人生を変える岐路となった。企業の社会貢献活動は撤退することになったが、すでに子どもや親と親交を深めていたこと、継続の要望が多かったことから、その事業を引き取る形で独立を決めたという。
コロンブス大航海という名前で始まった最初のヨット航海は、1991年(その後通算21回実施)。最初は十数名のメンバーと一緒に、横浜から大平洋を超えてミクロネシア連邦のポナペへ数十日間のヨット航海に出た。家から一歩も出ずに数年間引きこもっていた子ども達が、航海に出て真っ黒に日焼けして笑顔で帰ってくる。そのことにまず親が一番驚いたという。その結果、子どもだけではなく、子どもに対する親の接し方が変わってきた。最初は、子どもに外の世界を知ってもらいたいと始めたが、同時に親が子どもと離れる事がいかに大切であるかを目の当たりにした。「不登校や引きこもりの子ども達に必要なことは、自分の事を忘れられる・自分の事を誰も知らない、そのような場所への場面転換だと思います。子供たちは、学校という関係性、地域という関係性、親や家族との関係性から一度リセットして、誰も知らない、言葉さえ分からない環境下で仲間をつくり、引率者との信頼関係を築き、元気になっていきました。そのような姿を多く見てきた実体験として、互いに理解し合える共有のコミュニティをいくつも造り、それぞれのコミュニティ同士が協力しあって、子ども達をみんなで見ていく。それが大切だと思います」そのように明るく話す金森は、豪快な存在感を放っている。
現在は「ネットワークの力で若者支援を」という呼びかけの元、不登校・引きこもりだけではなく、発達障がい、貧困課題、子育て支援など多岐な分野で、既存の教育そして福祉サービスと連携しながら支援を続けている。ニュージーランドやオーストラリア、韓国にも拠点があり、グループ全体で約40の就労の場を創出している。その他にも、合宿型農業体験プログラムや、無業状態が続いている人への出口支援、オルタナティブ留学など。これまで100以上の支援プログラムを運営し、35年以上に渡る経験と実績を基に総合マネジメント的な役割を果たしている。
参考: 次号で詳しく紹介する予定だが、同社は「お好み焼きころんぶす」を経営している。家族や仲間と食事をするだけで彼らの支援につながる。裏表紙をチェックしてみよう!