俺は大の甘党だ。よく「あんこ派?生クリーム派?」と聞かれるが、僅差で生クリーム派である。
仕事柄、様々なスイーツと呼ばれるものを食べる機会が多い。新製品に至っては、市場に出る前から食べることもよくある。1日の最高記録は、アシスタントをしていた20代の頃に平らげた、3ホールと15個のケーキ。だが、それすらまるっきり苦ではなかった。笑
そんな俺が先日、和菓子の撮影に行ってきた。釜利谷の「金沢さかくら」という和菓子屋さんである。
正直、「こんな場所に和菓子屋さんが……」という印象だった。茶道や器、花道の仕事も多いので和菓子に触れる機会も多く、数も種類も相当食べているので、「金沢さかくら」の佇まいを見て、俺は逆に期待が膨らんだ。
そもそもこうした日本の伝統菓子が「和菓子」と呼ばれるようになったのは大正末期のこと。文明開化と共にケーキを始めとする西洋の菓子が日本に入ってきた際に、それらと区別するために和菓子と名付けられたことに端を発するらしい。
茶の湯の菓子として発展してきた菓子は、江戸時代に飛躍的に発展した。戦乱の時代が終わり、平和になったことから、菓子づくりに力を注ぐことができるようになったと考えられている。
撮影する実物をみて、第一印象は、「美しい!」だった。そして実際に撮影を始めると、宝石を撮っているような錯覚に陥ってしまったほどだ。
撮影が終わり、帰り際にお土産として沢山の和菓子を頂いたので、スタジオに戻って早速食べてみた。
「美味い!」
茶の湯と共に発展してきた和菓子は比較的甘みが強い、という印象を持っていたのだが、これは絶妙な味わいだった。老舗の「どうだ!これが和菓子だ」という感じではなく、「これが私達の和菓子です、いかがですか」という優しい感じからの、このクオリティにはビビった。
オリンピックやら、インバウンドやら、日本文化やら、世間では色々言ってはいるが、結局のところ、美しいものは誰が見ても美しいし、美味しいものは誰が食べても美味しいのである。
今度「あんこ派?生クリーム派?」と聞かれたら、間髪入れずに「和菓子派!」と答えることになりそうだ。