横浜を初めて訪れる人は、観光のほとんどを中区で終わらせるだろう。中区にはたくさんの見どころがあるので、中区だけで済んでしまうのも理解できる。しかし横浜には全部で18の区があり、中心地の人気スポット以外にも足を運びたくなる場所が数えきれないほどある。今回は磯子区にスポットを当ててみよう。
磯子区は根岸湾沿いに位置しているため海上輸送路へのアクセスが良く、横浜市民にとっては商業の中枢または工業地帯として知られている。そういった事情を背景に、磯子区にある緑の多いエリアや歴史的な場所は見過ごされがちだ。
利便性の高い沿岸部を人々が住処としたのは近代だけではない。発掘調査で、縄文時代後半(紀元前300年頃)の遺跡が発見され、その時代にはここにすでに人が住んでいたことが判明している。この遺跡は三殿台(さんとのだい)遺跡と呼ばれ、横浜の高層ビル群を見渡す港湾と、西側には丹沢山を望む小高い丘の上に位置している。遺跡はさながら発掘現場のようだ。小さな考古館では弥生時代(紀元前300年~西暦250年頃)と古墳時代(250年~550年頃)の出土品が展示され、復元された各時代の住居には中に入ることもできる。
より近代の歴史を体感するなら、横浜市電保存館がおすすめだ。こじんまりとした当施設は、かつて市内を走っていた市電の情報が満載だ。鉄道模型、写真や実際に使用されていた車両が展示され、市電の歴史をたどることができる。鉄道マニアや子どもなら絶対喜ぶ市電シミュレーターや0ゲージ鉄道ジオラマがあり、運転を体験して楽しめる(ウェブサイト:https://www.shiden.yokohama/)
文化的な歴史に興味があるなら、久良岐能舞台を訪れよう。自然豊かで落ち着いた雰囲気の久良岐公園の端に位置する能舞台では、古くから伝わる能以外にも、国内外のアーティストや音楽家のパフォーマンスが楽しめる。また大人も子どもも学べる伝統文化の講座も運営しており、公共施設なので料金も手ごろだ。スケジュールやその他情報についてはウェブサイトをチェックしよう(kuraki-noh.jp)。久良岐公園は広大な面積を誇り、自然も多く、ピクニック、ジョギング、ペットの散歩にも最適で、都市から出ずとも都会の喧噪から逃れることができるという素晴らしい公園だ。数時間のハイキングを楽しみたい人は、円海山のハイキングコースへ出かけよう。このコースは磯子区の西側からスタートして、鎌倉と隣接する木が生い茂った山道を進んでいく。コース途中、交差地点では標識が設置されているが、道をそれてしまわないように地図を持ち歩くことをおすすめする(グーグルマップはあまり役に立たない)。ネットで「円海山」を検索すると、横浜市のサイトで円海山周辺マップがダウンロード可能だ。