小林洋子のイラストはなんだか懐かしく感じる。長年愛されてきた絵本と同じ、暖かく、落ち着くような親しみがあり、魔法に包まれている。彼女が描く世界は、バージニア・リー・バートンの「ちいさいおうち」やルドウィッヒ・ベーメルマンスの「マドレーヌ」のように私たちを吸い込んでいくような優しさがある。そのレトロなスタイルに加えて、小林は明るい、はっきりとした色を使い、モダンでポップな雰囲気を出し、彼女のオリジナルスタイルを生み出してきた。
静岡で生まれ育った小林は、小さい頃から絵を描くことが大好きだった。中学生の頃、ファッション雑誌『オリーブ』に載っていた仲世朝子の「のんちゃんジャーナル」のイラストシリーズに魅了され、イラストレーターという仕事を目指すようになった。デザイン学校を卒業後、キャラクターマーチャンダイスの会社で、ディズニーグッズのデザインを手がけることになった。6年後の2013年、小林はその仕事をあっさりと辞め、フリーランスイラストレーターになる決意をした。
その当時手がけた仕事の一つが、ケーキ箱のデザインだった。友人が勤めていたパッケージ会社を紹介したことがきっかけだった。現在も一緒に仕事をすることがある。描いたケーキの箱がどこで売られるのかは小林は知らされないが、フランスのケーキ屋さん「キャトル」やロフト、東急ハンズなど、様々な場所で見かけるそうだ。
現在小林は旦那さんと小学4年生の息子と横浜に住んでいる。仕事と子育てのバランスをとるのが大変な時もあったが、家族は彼女にとって大切な存在だ。小林がイラストレーターとしての居場所を探しいた頃、旦那さんが彼女を励まし、自分に合ったスタイルを見つけるのを助けてくれた。息子にもよく意見を聞き、デザインの判断をすることも多いと小林は言う。イラストレーターを目指す方にどのようなアドバイスがあるかと尋ねると、小林はこう答えた。「イラストは身近で手軽だと思う方が多いけど、だから厳しいと思うんですよ。制作の世界は楽しいけど、自分が得意としているもの、またどんなイラストレーターになりたいのかを想像するのが大切」。小林は今制作中の絵本に没頭していて、近い将来に出版したいと思っている。彼女の本は、子供から大人まで年月が経っても愛されていくだろう。