2016年に三菱一号館美術館で「ジュリア・マーガレット・キャメロン展」が開催された。19世紀の女性写真家で写真史に輝く存在だ。
先日、神保町で彼女のオリジナルプリントが売りに出ているという情報を得て、とある古書店に行ってきた。古書店というだけで興奮するのに、キャメロンのオリジナルプリントが見れるかもしれないと思うと足取りも早い。美術館で見るようなガラスの向こうの作品ではなく、手に取って見れるというのが古書店の醍醐味だ。
店に着くと他のものには目もくれず、店主にキャメロンを見せて欲しいと頼んだ。すると、奥から店主の奥様らしいイギリス人の女性が愛しそうにそのプリントを運んできた。まさにキャメロンのオリジナルプリントだった。状態も悪くない。素晴らしい!
プリントに数センチまで顔を近づけ文字通り舐めるように見ることができた。マスクをしているのでプリントに顔を近づけても店主は嫌がらなかった。おかげでキャメロンの被写体に対する視線や感情を約150年の時を経て感じることができた。印刷ではない、オリジナルプリントだからこそ伝わるものなのだ。本当に素晴らしかった。とても手の出る価格ではなかったが、そのオリジナルプリントからは沢山のことを学ばせてもらった。
翌日、俺は仕事でポートレート撮影があった。撮影中、なんだか耳元でキャメロンに「こうやって撮るのよ」と教えられているようだった。