今回は以前紹介させてもらったロレガの新しいプロジェクトについて書こうと思う。まず簡単にその経緯を説明すると、慶応大学にHOPEというフィリピン・セブ島の子供達の支援をしているNPO団体がある。セブ島のロレガと呼ばれるエリアは日本人墓地を住居とし、そこの子供達の多くは戸籍がなく、そのため充分な医療も教育も受けることができない、それどころか戸籍がないということは人身売買や麻薬などが巣食ってしまう。ロレガの子供達はそのエリアから出ることが容易ではないので、自分達を客観的に見ることができない。そんな子供達にカメラを持たせ自分達の日常を撮影してもらうことで客観的に自分達を見るというワークショップと、その写真をJICAに展示し、ありのままのロレガを日本に伝えるというプロジェクトをTHE DARKROOMが行った。
実際に現地に入るとその環境は壮絶なものだったが、子供達が元気に走り回っていることで淀んでしまいそうな空気をかき回していたのが唯一の救いであった。そんな街の中を歩いていると、両面テープの剥離紙が大量に吊るされている部屋があったので、不思議に思って何に使われている部屋なのか聞いてみると、その剥離紙を編んでカバンや小物入れを作っていると説明を受けた。その時は完成品が無かったのでどんなものなのか見ることができなかったが、その背景として学歴のない母親たちが必死に自立しようとしていることが伝わってきた。私達が帰国した翌週、ロレガが火事になり一帯が焼け野原と化してしまったという報道があった。その後、行政の区画整理が始まったのだが、そこに住んでいる人達の現状は以前と何も変わっていないという。
数日前HOPEのメンバーがロレガから帰ってきて、剥離紙で作ったカバンを持ってきてくれた。正直、そのクオリティの高さにはびっくりした。どうやらHOPEとしては本気で販売したいと考えているらしく、現在はサイズや形など試行錯誤を繰り返しているという。「支援とは食べ物を与えるのではなく、食べ物の作り方を教えるのが本当の支援である」と誰かが言っていた。HOPEは彼らが商品となるものを生み出すことをサポートしているのだ。
HOPEのプロジェクトは剥離紙カバンだけではない。子供達の健康状態をチェックして食生活の改善を指導したり、教育のサポート等、メンバーが手分けしてそれぞれのプロジェクトを進めている。学生が主体となっているので、卒業していくメンバーと新しく入るメンバーがいて、毎年少しずつメンバーが入れ替わっていくことになる。そのためプロジェクトの軸がぶれないようにするのが一番の課題だと言っていた。
私達がHOPEをサポートしているのはロレガの子供達のためであることはもちろんだが、私個人としては、学生の彼らが将来社会人になり個々にもっと力をつけた時、世界のために一体どんなことを考え実行していくのかも気になるところである。