強羅(箱根)を訪れた事があるならば、谷の向こう側にある丘の目立つ場所に、「大」の形に整えられた森が広がっていることに気付くだろう。この丘は明星ヶ岳といって今回ご紹介する2つの山頂のうちの一つだ。
まず始めに箱根湯本駅から宮城野橋行きのバスに乗る。明星ヶ岳への標識は明確だが、1つ目のみ少し曖昧なので注意が必要だ。分かりづらければ、右方向を目指して行くとよいだろう。10分ほど歩いて行くと舗装されていた道は砂利道へと変わり、そこから数分で林道が分岐する。
険しい山道だが、歩くには問題ない。50メートル毎に番号が付いたペグの印があるため、現在地も確認しやすい。1時間もたたないうちに、ペグ20番に到達し、いわゆる「大」の字の左手部分に到着する。近くには案内図やその歴史がかかれた標識が立っている。言及するまでもなく観光地のようになっており、毎年8月16日には、霊を慰める盆の送り火「大文字」が焚かれ、夏の終わりを感じさせる風物詩がその場所を訪れる人々の気分を高める。尾根への道は右上がりに続いていくが、しばらくはこの大文字を楽しみながら過ごしてほしい。この文字の意味はもちろん「大」だが、それがいかに大きいか、実際に中まで足を運ぶと体感するだろう。大の字の中心部へ向けて50メートルほど歩くと、分岐する二つの足の方向へ向けて絶景が広がっており、休憩には最適な場所だ。箱根のドーム型の中心部が望めるだけではなく、右手には金時山の山頂があり、見渡して運が良ければ雄大な富士山のカルデラの稜線を見ることができるだろう。
それだけでも日帰り旅として充分満足できるが、ハイキングに戻ってゴルフコースのような山の背のペグ29番まで進んでみる事をお勧めする。少し寂しい明星ヶ岳の山頂は右手に歩いて数分の所にあり、古くから存在している神社が迎えてくれる。そのまま目印に沿って箱根湯本駅に戻ることも可能だが、時間の余裕があるならば引き返して尾根道をさらに1時間半歩いていくと、似た名前でより標高の高い明神ヶ岳にたどり着く。そこまで行くと見事な絶景が広がっている。
もしかするとその時、次の目的地となるであろう金時山を、熱い眼差しで眺めている自分に気付くかもしれない。しかしそれは別の日程で計画し、来た道を引き返し最乗寺に向かって左折することをお勧めする。長い道のりで所々急こう配な箇所もあるが、それを超えると海を望む広大な景色が待っている。
最乗寺は、神奈川県の天然記念物に指定されている樹齢数百年を超える杉並木に囲まれた大きな寺院で、そこを訪れるだけでも日帰り旅の価値がある。天狗伝説で有名な最乗寺には、天狗の下駄という意味合いで様々な下駄が奉納されている。ハイキングの最終地点で、人気の見どころスポットでもある塗装されたスチール製XXLサイズ(巨大)な赤下駄、「高下駄」に到達するだろう。まだ運動が足りないと感じたなら、さらに奥の院まで500段の階段を登ってみてはいかがだろうか。最後の200段はフラフラになること必至だ。
大雄山駅行きのバスは、通り過ぎることができない土産物店の近くから出発している。森を出るまで分離された歩道が整備されているので、駅まで歩いていくことも可能だ。