横浜には「愛されて60年」以上経つ洋菓子がある。「ありあけハーバー」だ。薄く柔らかいカステラ生地には、栗粒が練り込まれた栗餡がぎっしりと詰まっている。その形はまるで船のようで、まさしく港町横浜を代表する銘菓にふさわしい。しかし、同製品、そしてそれを製造する株式会社ありあけの道のりは、決して「甘い」ものではなかった。
1936年、横浜市鶴見に旧有明製菓が誕生した。同社は当初、日本の伝統的な和菓子を製造・販売していたが、時代の移り変わりに伴い洋菓子の開発を開始した。それから約20年後の1954年に「ロマン」が誕生し、その形状が船をかたどっていたことから、1966年にその名は「ハーバー」に改名されることとなる。
しかし突然、「ハーバー」は街から消えてしまった。1999年、旧有明製菓が不動産投資の失敗により倒産してしまったのだ。その翌年、「ハーバー」の復活を目標に、長年のファンと有明製菓の元社員が一致団結し、「ハーバー復活実行委員会」を結成。当時のレシピが残っていなかったため、開発に携わったパティシエを探し出して試行錯誤を繰り返した。そして2001年4月26日、旧横浜松坂屋(現カトレヤプラザ伊勢佐木)の店頭ワゴンで復活の催事が行われた。そのときには涙を流して喜ぶ客もいたそうで、3日間の販売分がわずか3時間半で売り切れたという。その後ありあけは次々と新商品を開発し、現在ではハーバーを中心に全5つのブランドを展開している。
ありあけは、横浜に根ざし、横浜を愛する企業として、精力的にこの地を、ひいては日本全国を支援している。横浜F・マリノスおよび横浜DeNAベイスターズのオフィシャルスポンサーや横浜マラソンのオフィシャルサポーターを務めたり、「美しい港町横濱をつくる会」のメンバーとして清掃ボランティアを日々行ったりしている。また、東日本大震災、熊本地震の復興に向け、売上金の一部を寄付してきた。
「感動創造業」を理念として掲げる同社は、今日も老若男女の「ハマっ子」の「おいしい」思い出づくりに一役買っている。
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