カメラを持って近所のお寺に行ってみよう。門をくぐったら目を閉じ、深呼吸をして、小鳥の声や風の音、木々のざわめき、太陽の陽射しをたっぷり味わってほしい。そのまま目を閉じた状態でカメラを構え、音と匂いを頼りに一枚シャッターを切ってみよう。そしてゆっくりと目を開け、それまでの感覚を失わないように、「匂い」や「音」を探してゆっくり歩きだしてみよう。普段見慣れた近所のお寺でも新しい発見があるはずだ。
今回の写真は、以前私が仏像を撮影させていただいた白山東光禅寺でのもの(2015年8月号(第78号))。このお寺のお庭も一年を通して素晴らしい。実はこの写真のうち一枚が、上記のように目を閉じて撮影したものだ。
多くの日本人は、
生まれると神社で「お宮参り」をし、
教会で「結婚式」を行い、
寺院で「お葬式」をする。
私たち日本人は、神道、キリスト教、仏教と、生まれてから死ぬまでにおおよそこの三つの宗教のお世話になるという、世界的に見ても珍しい民族だと思う。神社、教会、寺院といわれる施設に足を踏み入れると、それがどんな街中にあっても、喧騒から隔離される。時間すら別のものが流れ始める。
目を閉じ心を落ち着かせると、その空間や時間は人の五感を呼び起こす。お香の匂い、ステンドグラスを通した優しい光、空気の温度、ゆったりとした時間の流れ。
宗教や宗派を超えたこんな楽しみ方はいかがだろうか。