T反町は隠れた名店や思いも寄らぬ発見に満ちたエリアだ。賑やかな通りからちょっと逸れるとひっそりとした路地や公園、なにやら面白そうな建物に穴場のカフェやレストランetc…。そんなオモチャ箱をひっくり返したような反町駅から徒歩わずか2分のところに「パン ゴルジュ」はある。こじんまりとして落ち着くイートインスペース、温かな店の雰囲気、そしてトレーやカゴいっぱいに盛られたパンを見ていると、まるでここがパリのような感じさえする。パンはどれも美しく並べられていて、見た目だけでもインパクト十分。それでいて、味については余計なものが入っておらず、良い意味でシンプルだ。「小麦の良さが出るようなパン作りを目指しているので、レシピもシンプルにしています」と、オーナーの小林公平は語る。小林が作るペイストリーを一口頬張れば、その意味がよくわかる。「苺のデニッシュ(¥270)」「スパイシーソーセージ(¥300)」「サーモンとほうれんそうのキッシュ(¥350)」はどれもボリュームがあるものの、筆者達はあっという間にたいらげた。ペイストリー自体は「重すぎず、くどすぎず」なので、具材とうまく合って一層ナチュラルな味わい。「ショコラフランボワーズ(¥260)」でさえ口当たりは軽く、甘すぎない。それでも中のチョコレートの深い味わいにはほっぺたが落ちそうに…。以前、祖父と叔父が営んでいた「オグラベーカリー」が閉店することになったのを機に、小林は自分で店をやってみたいと思うようになった。そして専門学校を卒業後、ブノワトン、東京のDEAN & DELUCA、バゲットラビット、ジョエル・ロブションといった店で経験を積む。「パンの世界に入る時に、10年したら独立するという目標を立てていました」と小林。その言葉通りとなって、2年前、かつて「オグラベーカリー」があったその場所に自分のベーカリーを開いた。将来の展望を聞くと、小林はこう答えた。「この先20年はこの店を続けていきたい。そしてこの街の一部のような存在になりたいですね。そのためにクリアすべきことは多々ありますが、まずはスタッフも自分も心身共に健康でありたいと思います」。