永井デイビッドは横浜元町とオンラインで、Bridge Beyond Englishという英会話クラスを開催している。このクラスが他の一般的な英会話教室と違うのは、クラス規模が1クラス最大4名の小規模であることと、対象者が英語上級者と中級者であること。そしてクラスの焦点が、文法の習得やスピーキング能力の向上ではないということだ。新しい考え方に触れ、クリエイティブな思考や、異なった視点や価値観の人たちと心が通うコミュニケーション能力を身につけることにフォーカスしている。彼のユニークなバックグラウンドが、このコンセプトに大きく影響している。
永井はアメリカ人の両親を持つが、台湾で生まれ育ち、これまでに米国、バングラデシュ、フィリピン、インド、日本を含む6カ国に住んだ経験がある。学んできた言語は4つ。この国際経験が、多様性を受け入れることと人との繋がりを大切にすることを伝え、世界をよりよくしていきたいというビジョンに繋がった。「さまざまな人の考えから学び、そしてお互いに学び合える、そんな場所を共有できることは光栄です」と、彼は話す。
日本へ移住する前は、インドのスラム街で住み込みで、NGOの教育支援や、健康と事業支援に従事した。約5年前に、パートナーのチャミ(本誌第112号参照)と結婚するために来日し、東日本大震災で大きな被害をうけた東北でNGO活動に参加した。そのプロジェクトがひと段落つき、永井夫婦は、今度は自分たちのための選択をしようと、横浜に定住することを決める。
一般的な英会話教室で講師として働いたが、彼はもっと上級レベルの英語を教えたいと思った。生徒が英会話の練習をするだけでなく、英語をツールとして今世界で起こっていることについて、興味を持って探索し、クリエイティビティを育む場所を提供したいと考えた。そうして、最初はアパートの一室でクラスを自主開催しはじめた。
ディスカッション形式の彼のクラスでは、トピックはジェンダー、気候変動、人種的平等、宗教、政治、哲学などさまざまだ。「私は、生徒が英語を使ってコミュニケーションをとり、人生や仕事を革新していってほしいと考えています」と、永井は話す。「変化していく世界で、より柔軟でクリエイティブな考え方や多様性への理解、文化やバックグラウンドが違う人たちに共感する能力が必要だと生徒は考え、ここで学んでいます。今日、創造性とコミュニケーションスキルはかつてないほどに重要だと思います」
「国際的な経験をすることで、私は世界をこれっぽっちも理解していないんだと気づかされます。宗教や文化、言語、世界観を通して、いろいろな考え方があるということに気づきます。学ぶことをただただ楽しんでいます。それを何らかの形で、クラスの中で共有できればと思っています。多様な考え方を提示し、そして生徒たちのユニークな視点から学んでいきたいです」
現在、彼の生徒はほとんどが日本人だが、台湾人や中国人、ネパール人、韓国人も参加してきた。彼ら全員に共通していることが、英語スキルが高いことと、そのスキルをもって変化する世界と深く繋がっていきたいという思いがあるということだ。生徒からの満足度は高く、一人の生徒からのコメントでは、「デイビッドが毎週用意しているトピックや質問は示唆に富み、私の論理的な考え方と英会話の向上に役立っています」とある。
横浜の生活はどうかと尋ねると、「ここでの生活は好きです。たまに、横浜、特に中区にいることがごく普通のことに感じられます。ここは多様性に富み、国際的です。横浜中華街、山手、石川町のエリアに住んでいますが、たくさんの文化とさまざまな人々が共存しています」
コミュニケーションとは、情報伝達だけではなく、価値観や感情を表現し、お互いに理解することである。さまざまな人たちとコミュニケーションをとるのに、英語はとても有力だが、国際的な視点やクリエイティブな考え方はお互いを理解する上で必要不可欠だ。世界をよりよい場所にするべく、永井は自身が人と文化とアイデアを繋ぐ架け橋となり、多様な視点をここにもたらしている。
Website: bridgebeyondenglish.com