今年7月、横浜中華街の人気上海料理店、状元樓のオーナーが野毛に「チャイナビストロ八寸」をオープンした。都橋からほど近く、店の外観は老舗和食店のような上品な佇まいで、コンセプトは「京都の町家を改装してオープンしたチャイナビストロ」だという。店内では中華風の鮮やかな絵画や掛け軸が壁を彩る一方で、可愛らしい盆栽が和の静けさを演出し、カウンターの前にはバルのような雰囲気のハイスツールが並んでいる。
八寸のメニューの基本は中華料理だが、中華に和食や世界各地の味を融合させたオリジナルのフュージョン料理を提供している。「ビーフシチューの黒酢仕立て (2,500円)」、「トリッパのトマト煮込み、チャイニーズ香辣仕立て(880円)」、「カニ玉キッシュ(780円)」など、いかにも相性の良さそうな味の協演が楽しめる。私が頂いた人気メニューの「海老のワサビマヨソース和え、マンゴーサルサ添え(1,480円)」は、海老マヨにワサビの辛味とマンゴーの甘酸っぱさが見事にマッチした逸品だ。また、8種類の前菜を一口ずつ楽しめる盛り合わせ「八寸(1,680円)」は、目にも舌にも麗しい看板メニュー。ビールやワイン、日本酒や紹興酒など好みのドリンクに合わせて、じっくりと味わいたい。
オーナーの陣恵は3世のハマッコ華僑。インターナショナルスクールに通い、カナダの大学で学び、日本の企業で働いた後に家業を継いだという。日本の食材を使った中華料理を食べて育った陣にとって、各国の食材や味がクロスオーバーすることは、ごく自然な食体験だったそうだ。そんな陣が発案するメニューを、海外経験が豊富でフュージョンの楽しさを熟知しているシェフが皿の上に表現する。「ぜひ色々な食文化を楽しんでもらいたい」と陣は言う。中華街を飛び出して、野毛で花開いた、小粋で新しい中華料理の世界。グルメな大人たちに、ぜひお試し頂きたい。