先月号で、横浜で観光としての写真体験教室を実現するために関係各所に回ってくると宣言した。もう一度ここで簡単に説明すると、横浜は観光地であり、写真発祥地の一つである。ならば写真の体験教室が観光の一つとしてあっても良いのでは。ということで是非やってみたいと思ったのである。
横浜で文化芸術といえばアーツコミッションヨコハマいわゆるACY である。そこには古くからの友人であり、数々の修羅場を共にした戦友でもある杉崎氏がいる。彼は見た目通りかなりクールで、たとえ友人でも面白くないものや見込みのないものに関してはバサッと切る。だからアーティストからの信頼も厚いのだ。逆に中途半端なアーティストからすると曲者に思われているに違いない。そんな彼にまず意見を聞きに行ってみた。
「良いと思います。これからの観光の考え方の一つとして、チェックイン型ではなくチェックアウト型になっていくと言われています」
いきなりのプロっぽいご意見に感動。つまり、チェックイン型とは、基本的に宿や航空券は歩留りのビジネスなので、チェックイン率を高めていくことをビジネスの目標として、定番の観光コースと宿所の魅力を伝えて情報のインプット段階で利益を最大化していくモデルである。一方で、チェックアウト型とは、チェックイン後の人との交流や情報や体験の豊かさを楽しむもので、その価値はチェックアウト時にピークがきて、宿所が街を楽しむ玄関のような役割を果たしていき、宿のみならず街全体へのリピーターを獲得していくモデルである。これが変わることで何が良いかというと、一言でいえば「誰もが楽しい」。要は、その楽しいという体験がお金となって街に落ちる訳だ。杉崎さんの知り合いがはじめた金沢のホテルが今それで話題らしい。では横浜にはそれに該当するものがあるのか聞いてみた。
「野毛山に新しくできたFutareno なんか良いんじゃないですか。場所も近いし齊藤さんの言う体験観光的な話はこういうところのお客様が良いのではないでしょうか。それから、BUKATSUDOとも提携できたら良いですね」
これまた、具体的なご意見をいただいた。さらに彼はこんなことも言っていた。
「地元の人が楽しんでいるものを観光客にも楽しんでもらうという発想や、アートを切り口にした観光は、いわゆる美術館に来て下さいというよりも、もっと気軽にアートへ接する機会となると思います」
私たちは写真の専門家なので、そのジャンルには長けていても、その他の世界には疎い。彼はこんな僕らの活動を俯瞰してくれているので本当に助かるのだ。彼の口調や態度からも、この話は「面白い」と思ってくれたのだろう。幾人か会うべき人物の名を挙げていただき俺はACYをでた。