19世紀後半の横浜開港以来、フランスと日本は長いあいだ関係を築いてきた。今月号では「横浜フランス月間2022」を祝して、横浜日仏学院の館長、シモン・ホレンベルジェ氏を紹介しよう。
日本でフランス文化が浸透することとなった経緯を教えてください。
日本における現代のフランス文化は、外交官でありフランスの劇作家・詩人でもあったポール・クローデルまでさかのぼります。クローデルは、1921年から1927年まで外交官として東京のフランス大使館に勤務しており、フランスの文化的ネットワークの礎を築くという役割を果たしていましたが、彼は自作の優れた詩や演劇で有名になっていきました。当時、新聞記者からは「詩人大使」と呼ばれていたほどです。現在、日本にある日仏学院は6つの都市ー東京、横浜、京都、大阪、福岡、那覇にあります。また、京都には芸術家の住居「ヴィラ九条山」があります。
横浜日仏学院のプログラムや活動には、どのようなものがありますか。
当学院では450人以上の生徒にフランス語を教えております。フランス語を勉強したい子供と大人向けに多彩なコースを提供しています。学生が柔軟に学べるオンラインコースのほか、フランスへの旅行前に準備したい方向けのコース、ビジネスコース、日常会話のコースがあります。さらには、テーマごとのクラスもあり、フランスの伝統文化、現在文化に加え、政治、歴史、文学、芸術、音楽といったトピックを掘り下げていく内容のコースもあります。また、当学院ではフランス語資格試験を実施しており、世界で認知されているフランス国民教育省公認の認定証も発行しております。
横浜日仏学院の特徴を教えてください。
横浜市からも協力を得て、1990年に神奈川県横浜市の中区に横浜校を設立しました。現在18人の講師がおりますが、すべて資格保有者で経験豊富な講師が揃っています。事務スタッフは8人で、文化イベント業務、入会手続きや運営業務などを担当しております。当院には2000冊以上の蔵書があり、フランスに関する書籍、DVDやCDを貸し出しています。
横浜フランス月間2022の内容はどういったものでしょうか。
2022年11月11日(金)から12月18日(日)の期間中、フランス月間として展覧会、講演会、マカロンセミナー、チーズ&ワインセミナー、映画上映、音楽ライブなどが開催されます。横浜市内各地にイベント会場があり、赤レンガ倉庫、象の鼻テラス、シネマ・ジャック&ベティー、そしてもちろん関内駅が最寄りの当学院でイベントを実施します。横浜市の皆様には文学、映画、食文化といったおなじみのフランス文化の面だけではなく、建築、写真、宇宙開発といった現代的なテーマのイベントもお楽しみいただけます。2005年に第一回目が開催され、7月14日のバスティーユ陥落の日のあたりで開催されていましたが、コロナの影響により、2020年は開催を断念、2021年は開催時期をずらして11月に開催しました。多くのイベントが日仏2か国語もしくは日本語で実施されますが、フランス語や日本語がわからなくても写真や文化芸術の展示、音楽ライブなどでお楽しみいただけます。また、横浜市文化観光局と横浜市芸術文化振興財団にも続けてご支援いただいており、感謝しています。
シモンさんのこれまでの経歴と横浜との関わりについて教えてください。
私はフランス、ボルドーに生まれ、ストラスブール大学で学びました。日本に初めて来たのは2008年で、政治学科の交換留学生として1年間滞在しました。その際、日仏関係強化に貢献を、特にフランス文化と日本文化の中で、人と人とを繋げることに貢献したいと強く思い、卒業後、フランス外務省に入省しました。最初の任地はインドのニューデリーで、現在のポストは2021年から着任しています。
最後に、フランスと横浜の関係での今日的特徴はなんでしょうか? ご存知のとおり、フランスと横浜は江戸時代末期から多くの重要な関係を共有してきました。フランス領事館は横浜の山手地区にフランス山として残っています。リヨンとの絹での交易は関係を繋ぐ重要な要素でした。それ以降、知的、学問的、文化的な交流が日仏間で花開き、未来ある友好関係となりました。さらに重要なことは、横浜が再び東洋でもっとも先進的かつ国際的な港湾都市として名のりを上げていることでしょう。