プロの目線で吟味されたクラフトビールが揃い、居心地の良さと、開国当時の横浜を感じられる店。それが「ブラントンズ」だ。元町で営業していたが、オーナーの河野規美子(通称キミ)とスコット・コーイが中華街の一角にある古民家をリノベーションし、現在は移転している。内装はレトロとモダンが共存しており、新規顧客も常連客もくつろげる雰囲気をかもし出している。外観は鮮やかな青と赤で統一され、中華街らしさも持ち合わせた、目を引く店構えになっている。
ブラントンズには5つのタップ(さらにリアルエールのタップも)があり、日本各地のクラフトビールが週替わりで楽しめる。ロコビア、エビナビール、反射炉ビヤと沼津クラフトのビールが繋がっていることが多いが、ほかにも箕面ビール(大阪)、大山Gビール(鳥取)も提供されていることもしばしば。地元のバーと調整していることもあり、同じラインナップのビールをほかでも楽しめるということはほとんどない。樽生ビールは280ミリリットルもしくは437ミリリットル(通常800円と1400円)、リアルエールは568ミリリットルで提供される。静かに流れるジャズを聴きながらじっくり味わおう。
フードメニューは多くはないが、ビーガン料理もあり、健康に配慮された内容だ。おすすめはシェパーズパイ。コロナ禍の営業自粛要請の影響により、営業のメインは缶や瓶のビール販売(料飲店等期限付酒類小売業免許による)となったが、品揃えは素晴らしく、ひでじビール、ビーイージー(青森)、米国やスコットランド産のビールや珍しいミード(ハチミツ酒)など、20銘柄が購入できる。
一階には小さなカウンターと、持ち帰り用の販売スペースが設けられている。しかし、せっかくなので二階に上がって、「ハウス&ガーデン」をテーマにしたという前述の個性的な空間を味わってみよう。プランターに植えられた花々に囲まれて、一人静かに飲んでもいいし、友人たちとにぎやかに楽しんでもよい。壁には、明治初期に来日し、横浜の近代化に大きく寄与したスコットランド出身のリチャード・ヘンリー・ブラントンの功績や、横浜の明治時代の華々しい歴史が飾られている。このブラントンこそが、スコットランド生まれでカナダ・ブリティッシュコロンビアの西海岸に移住した第一世代であるスコットが、キミと多くの時間を過ごした横浜でバーを開くきっかけになったのである。