伊勢佐木モールを過ぎて脇道に入ると、ふわりと風になびく白い暖簾が目に入る。中の様子は一見、寿司店のようだが、ここは和食と日本酒、そして〆の蕎麦を楽しめる小料理屋だ。外国人にとって寿司の知名度は高いが、蕎麦も日本人には馴染み深い食べ物のひとつ。店主の山脇大輝は、だからこそ多くの外国人に蕎麦も味わってもらいたいのだ、とその胸の内を語る。
メニューには季節感が漂っていて、この日はカツオ、アジ、水茄子、トウモロコシなど夏を感じるお品書きだった(豆アジ南蛮漬¥650、トウモロコシのかき揚げ¥800など)。味や見た目には丁寧な仕事ぶりと工夫が表れている。蕎麦の実ポテサラ(¥500)は煎った蕎麦の実が混ぜ込まれていて、サクサクとした食感と直後に蕎麦がふわりと香る、印象に残る一品だった。
日本酒は蕎麦に合う淡麗辛口タイプが常備されている他、時節に合わせた銘柄も用意され、他の料理とも楽しめる(¥700~/1合)。この日は夏酒も多くラインナップされていた。頼めば半合で出してもらえるのも、種類を楽しみたい人には嬉しいところだ。
蕎麦はその日に打った分限り。混み具合によっては閉店前になくなってしまうこともあるようだ。二八蕎麦ならではの滑らかでつるりとした喉越しで、分量も程よく、料理をたくさん楽しんだ後でもさらりと食べることができた。
山脇は先の震災後、店を開く先輩を手伝うため福島に移った。4年間料理や蕎麦の腕を磨いているうちに、その土地や人が好きになった。その後横浜に戻り、開いた店には東北から取り寄せた食材や日本酒が多く並ぶ。店内は禁煙、カウンター10席にテーブル席が複数。東北に想いを馳せつつ10月に1周年を迎える。ちょうど新蕎麦の時期でもある。