ベイクルームの焼き菓子はどこか親しみを感じる温もりがあって、なんだか子供の頃を思い出す。家でお菓子を焼いている時のオーブンの熱で暖かく包まれたキッチン、家の中に広がるおいしい香り…。ベイクルームにはそれと同じ心地良い雰囲気が漂っていて、中へ入った途端アットホームな気分になる。ガラスケースの後ろにぎっしりと並ぶ、見るからに美味しそうなペイストリーは全てオーナー・パティシェの錦織翠の手作りだ。横浜育ちでずっとお菓子作りが大好きだったという錦織、学生時代のアルバイトがきっかけで、いつか自分のカフェを開きたいと夢見ていた。
大人気のこの店はひと月にたった3日間しか営業しない。そのため、売り切れになる前に彼女の作ったお菓子を絶対手に入れようと訪れるお客さんで店内はいっぱいだ。ゆくゆくはスタッフを雇って営業日を増やしたいと思っているが、今はお菓子を焼いたり準備などで4日かかるなど、お店を開けるための作業に数日取られることと、幼い息子と過ごす時間の確保との兼ね合いがある。母親業をこなしながらワークライフバランスを保つことは容易ではないと認めながらも、錦織は仕事と生活、その二つの間の落としどころを見つけてどちらの時間も後悔のないよう、大切にしている。「不定期の営業なので、わざわざ来店してくださるお客様に「来てよかった」と思っていただけるよう、心を込めて丁寧にお菓子を作り、感謝の気持ちを伝えながら販売しています」と錦織は言う。
取材当日に並んでいたお菓子は、イチジクのタルトからブラウニーやマフィン、そして数々のケーキ…とバリエーション豊富。抹茶とチョコレートのケーキ(¥350)は絶品、チェリーのチーズケーキバー(¥350) はずっしりとしていて美味しいクランブルがまぶされた、甘くてクリーミーで病みつきになりそうな逸品だ。そして絶対オススメなのがスモア(¥350)。このチョコレートのかかった厚みのあるふわふわマシュマロのビスケットサンドは、一口頬張った途端、口の中でとろけてしまう。ベリーリコッタチーズケーキ(¥300)はほのかな甘味と絶妙のしっとり感が素晴らしい。リコッタチーズのまろやかで繊細な風味に、ベリーの爽やかな酸味がアクセントになっている。ベイクルームの心のこもったお菓子はどれも一口ごとにリッチでクセになりそうな味が口の中にじゅわっと広がり、それでいて手作り感満載の程よい甘みのお菓子ばかり。またすぐにでも行きたくなるお店だ!