アンカリングという言葉がある。「アンカリングとは、五感からの情報をきっかけに、特定の感情や反応が引き出されるプロセスを作り出すこと」と言われている。「この匂いを嗅ぐとあの頃を思い出す」というようなことである。俺たちカメラマンが撮影した写真が、被写体やその写真を見る人のアンカリングになっていたらそれはこの上なく嬉しいことだ。
例えば、新たに起業した社長がプロフィールを撮影したとする。10年後、会社は社員も増え、売り上げも上がり、大きくなった。でも何か足りない、そんな時、起業当時の自分の写真を見て、「そうか、俺はあの時こんな思いを持っていたんだ、今の俺はあの時の強い思いを持っていない。だから何か足りなかったんだ!」まるで起業当時の「理念」を突きつけるような力を持っている写真、まさにアンカリングされた写真というわけだ。
写真は、その人の人生の座標を示し、これからの方向性を見出すためのとても重要な役割を持っている。俺たちカメラマンの役割は一朝一夕で果たせるものではない、まだまだ精進しなくては!