神奈川の文化施設、県立音楽堂や県立図書館、能楽堂などがあつまるエリアと、桜木町の中心部をつなぐ紅葉坂のふもとに、この秋オープンした炭火焼のイタリア料理店「&GRILL」。シェフの渡辺正幸は都内で経験を積んだ後、食の激戦区でもある石川町のチャコールグリルグリーンで15年間料理の腕を振るってきた。今回満を持して、ソムリエ資格を持つ妻の渡辺友絵と二人で、グリーンとは趣向を変えてイタリア料理の店をオープンし、再スタートしたのがこの店だ。
店の扉を開くと、隠れ家のようなこぢんまりとした空間の中に、カウンター5席とテーブル6席が用意されている。コンクリート打ちっぱなしの壁面と、部分的に使われているアイアン素材がインダストリアルなインテリアを印象付け、そこに木目の調和が温かみのある雰囲気を加えている。入ってすぐの壁面を覆う大きなワインセラーには、主にイタリアワインが多く取り揃えてあり、食欲を誘う炭火で焼いたお肉の香りが迎えてくれる。
取材時には、ルッコラやレッドオニオン、トマトビネガーがベースのソースがかけられた、炭火焼の和牛ステーキと、ローマの特色あるパスタ、トンナレッリを使ったからすみのパスタを試食した。牛肉の下には、2年間低温熟成したというメークインが添えられている。メークインを凍らない程度に低温で長期間熟成することによって、メークイン自体が糖度を上げていき、味わいが甘くなるという。まるでさつまいものような味わいで、単なる付け合わせの域を完全に超えている。トンナレッリを使ったパスタは、コシのあるパスタの食感がからすみにピッタリで、本場イタリアの贅沢な味わいに仕上がっている。提供される料理は、これまでの渡辺の経験を生かし、古典的なイタリアンからジャンルを超えた新しいスタイルまで積極的に取り入れていく予定。メニューはあまり固定せずに、その季節の旬の食材を活かして、その時々で考えながら作っていきたいと今後の意気込みを語ってくれた。
「小さいお店なので、肩肘張らずにみんなでワイワイと、ガツガツ食べて、ガンガン飲んで、そんなお店にしていきたいです!」そのように語る、シェフ渡辺のメインステージは、今まさに始まったばかりだ。