同業者で「ライバル」というと商売敵だったり、相手を妬んだり、蔑んだりと、お互いの営利が絡んでくると、どうしても素直に「ライバル」と言えない。お互いを高めあってこそ「ライバル」なのだから。そう思うと心の狭い俺は同業者にライバルと言える奴はいない。
その代わり、「俺も頑張らなくちゃ!」と思う場所がある。それが「仕出し屋ケンちゃん3」ーホルモン焼き屋だ。「ケンちゃん」は幼稚園からの幼なじみで、20年くらい前からよく会うようになった。もともとはお弁当屋さんで、今では関内と黄金町にホルモン焼き屋を出している。タン塩、大トロホルモン、中落ちカルビ、和牛カルビ、和牛ハラミは外せない。お世辞抜きでこれがまた美味い!
どれくらい美味いかというと、大切なクライアントを連れて行くほどマジで美味い!そして安い!どうしてこんなに安くできるのか聞いてみると、「高い金出せば、美味いものが食えるのはあたり前。安くて美味しいもんを出すのが腕だよ」
・・・・・なかなか言えないセリフをサラッと言いやがった。
なんだか 俺はいてもたってもいられなくなって、その日はサッサと食べてスタジオに戻った。何をするわけでもないのだが、カメラをいじっていないと落ち着かなかった。
ある年のクリスマスの夜、一人で「ケンちゃん」に行った。
「少しは休みなよ」とあいつが言った。
「お前もな」と俺。