写真家を志す者ならば、だれもが憧れるのがハービー・山口だ。それは私も同じだった。初めてワークショップをお願いした時も、一人のファンとして興奮していたのを覚えている。
ハービーさんの生き様は若い写真家に夢を与えてくれる。なぜなら、自分の夢に向かって一歩を踏み出すことができれば、皆夢を叶えるチャンスが巡ってくるということを実践した人物だからである。ハービーさんと話をしていると、踏み出しきれなかった一歩を踏み出す勇気を貰うことができるのだ。数年前になるが、野毛での「街歩きワークショップ」に同行した時、「人を撮るということは楽しいけど難しいよね〜」と言っていた時の笑顔が忘れられない。
実は先日、ハービーさんと野毛のバラ荘で「街レビ」を開催した。「街レビ」とは「街中レビュー」の略で、野毛で写真を肴に大いに語ろうというものだ。参加者は普段聴くことのできない「ここだけの話」を楽しんだ。バラ荘でハービーさんに語っていただいたことをここで書くと「ここだけの話」にならないので、そのかわりに、その日の帰りの車中での話を一つだけ紹介することにする。
第三京浜に入ってしばらくして「さっきみんなに言い忘れたんだけどポートレート撮影の一番のコツはね……」とサラッと語ってくれた。
ハービーさんらしいな! そうだよな、そうでなきゃあんな素敵な写真は撮れないよな。自分にできるだろうか、いや、本当はだれでもできることなんだろう。でもそれを本当に心からすることができるのだろうか……。自問自答してしまった。
「齋藤さん、さっきみんなに言い忘れたんだけどポートレート撮影の一番のコツはね、シャッターを切るときに相手の幸せを心から願うことなんだ」
カッコよすぎるぞハービー・山口。