彼女との出会いは約7年前になる。彼女が写真学校を卒業してすぐだ。同級生とユニットを組んで自ら写真をベースとした制作会社を立ち上げていた頃だった。当時彼女は20歳にして写真家と経営者という二つの立場を使い分けるというプレッシャーと戦っていた。写真家としての好奇心と経営者としての堅実さを両立させることはかなり難しい。今の日本では広告や商業写真を仕事にしてしまうと作家活動が希薄になってしまうと言われていることから写真家の多くは写真以外の収入源となる仕事をしながら作家活動をしている。純粋に作家活動だけで生活していける写真家はごくわずかなのである。
彼女は1988年静岡県に生まれる。高校時代はヒロミックスや蜷川実花などの写真集を図書館で見ていたという。高校を卒業すると迷わず写真学校の門を叩いていた。いわゆるガーリーフォトが台頭してきた時代である。
写真学校では自分の好きな写真と周りの人たちが目指している写真と大きなギャップがあったので、自分の作品に対する友達の目をいつも気にし、知識と技術をつけていくことが自分の居場所を作ることだと思っていた。当時、将来のことは漠然としたものしかなく、雑誌のカメラマンになれればいいなぐらいだったが、写真と並行してウェブ制作も勉強していたので、卒業間近にはウェブ制作会社に内定をもらった。が、迷ったすえ、同級生とユニットを組んで制作会社を立ち上げる道を選んだというわけだ。
そんな彼女の作品を今回は紹介したい。
人の顔を横に見せることで被写体の人間としての個性を分かりづらくする。そうすることで人それぞれが持つ肌の質感や骨格による凹凸をより際立たせることに成功している。
地球に陸地が生まれ現代に至るまでの悠久の時の中で山脈が形成され谷や湖がうまれてきた。人が生まれて数十年の時の中で形成されてきた顔はそれに匹敵するほどの崇高さをもっていると彼女は言う。
この作品は彼女にとってポートレートであり、ランドスケープであり、被写体へ敬意を表現している。