近年、日本では野生鳥獣肉(「ジビエ」フランス語のgibierに由来)の料理がちょっとしたブームになっており、猪肉や鹿肉はもはや珍しいものではない。また、馬は野生というわけではないが、馬肉は長野県や熊本県では古くから一般的な食材として親しまれている。2017年から2020年にかけて、馬肉に特化した「29BY」というブルーパブが吉田町にあった。しかし建物の老朽化により、2021年に移転を余儀なくされた。現在は「254 BeeR」へと名前を変え、東横線白楽駅の東口から徒歩1分の場所にある新しい場所で、席数30、キッチンとビール醸造設備が揃ったおしゃれな店として存在感を放っている。
醸造責任者の五条芳範は「横浜ビール」出身。254 BeeRを運営する株式会社N-1の代表取締役、松本大輔とは長年一緒にパートナーとして仕事してきた仲で、同社は野毛町で2店舗飲食店を経営している。メニューには馬肉の刺身、燻製、グリルなどがずらりと並んでいる。また、北海道産や東北産の鹿肉、冬場には野生の猪肉も。ジビエ以外にも多数の料理があり、肉食好きにはたまらない。馬刺し盛り合わせなどメイン料理の平均は1,450円ほどだ。
五條は独創的で、さまざまなアイデアを持つブルワーだ。先日のビールのラインナップは、ドライホップされたセゾン、甘夏サワー、アンバーエール、ペールエール、IPA2種や、オーストラリア産のゲストビール2種。全品スモール(260ml)またはレギュラー(350ml)サイズから選べ、750円から900円で楽しめる。アルコール度数が高すぎるものやホップの風味が強すぎるようなビールはなく、すべて料理と楽しめるような満足感のあるビールが提供されている。ビールを仕込むとき、事前に計画せずに心の赴くまま、その豊富な経験と「こんなビールが飲みたい」という欲求に従って直感的に醸造すると五條は明かしてくれた。
スタイリッシュな店内には、角のムフロン羊をモチーフとしたデザインが各所に飾られていることに気づく。このデザインは、店名の「254」にも表されているが、2人が同じ昭和54年(1979年)の未(羊)年生まれであることにちなんだものだそうだ。未年生まれの人は(筆者もその一人だが)、この囲いのなかでは家にいるかのようにくつろいでしまうことだろう。