今年9月1日で関東大震災から99年経つが、横浜市では100年の節目を迎える2023年にかけてさまざまなイベントを予定している。当時のがれきの山と化した横浜市の様子や地震がもたらした影響は、この自然災害の生存者による多くの手記を通じて、消えることのない記憶となって人々の脳裏に刻まれている。特に横浜市は、80%近い部分が震災と火災により壊滅的な被害を受けたが、その後安全性を最優先に急ピッチで復興が進められた。震災によって新しく造られたエリアの一つに山下公園がある。震災当時、がれき廃棄所に指定された場所であったが、がれきを埋め立てた上に造られ、1930年に日本で最初の臨海公園として開園した。
山下公園の上方に位置する山手エリア、中でも元町公園周辺は勾配のある散歩道が多く、多くの外国人の別荘が倒壊した。この地域を再建する目的で、公園の最も低い場所に1931年(昭和6年)元町公園弓道場が誕生した。山手本通りに点在する西洋風の建造物や外国人墓地に囲まれた地域に目を奪われ、この弓道場や元町公園プール(1930年建造)には気づかない人もいるかもしれない。
弓道を極めるための弓道場として建設され、稽古(練習)場としては関東地区で当時最大の規模となった。取材のため訪れると、管理責任者の久間倉一男氏(弓道四段)が弓道場の歴史について教えてくれた。久間倉氏によると、元町公園弓道場は戦後占領により1953年まで使用禁止となった。最初の木造の道場は1945年5月29日の空襲を免れ、1970年まで現存していたが、その後、改築され現在に至る。久間倉氏は、古くから伝わる弓道の技を覚えたいと門を叩く人々を迎えてくれる。初心者は、月2回金曜日もしくは土曜日、全10回(5,000円)の初心者講習に参加可能だ。通常、初心者講習会を修了したあとは、それぞれの会に入会し修練を積んでいく。経験を積んでいくうち、自分の弓矢と袴を購入する人も多い。
元町弓道場は9:00-17:00開館。(第三月曜日、祝日休館)指導は日本語のみで行われる。