ポカポカ陽気でお出かけ日和の多い5月。心と体にエネルギーが満ちてくるこの時期に何か新しいことを始めたいと思っている人にぜひ紹介したいのが「武家茶道」だ。武家茶道とは、飾らず、気取らず、禅の原点に帰った茶風を持つ、戦国時代に生まれた武士の茶道である。無駄な動きをそぎ落とした所作は、見る人に清々しさと癒しを与えてくれる。
茶道を体験したことのある人は、この武家茶道の簡素さに驚きを感じるかも知れない。まず、お茶会には着物で参加する必要はなく、普段着で良いのだ。さらに、出されたお茶は、一度軽く茶碗の正面を避けて、あとは自由に頂くだけ。ほかの流派で見られるような、お茶碗を持ち上げてしげしげと柄を眺めたり、隣の客に「お先に頂きます」と挨拶をしたりするような習慣もない。
この、あまり世に知られていない武家茶道の世界を広め、伝承していく使命を負うのは、壺月遠州流禅茶道宗家の中村如栴(なかむらにょせん)。中村のお点前は、まるで能の舞台や、空手の演武を見ているかのような印象を与える。摺り足で畳の上をすべるように歩き、柄杓に素早く手を伸ばす様は、まるで刀に手をかける侍の如し! 質素で簡素、そしてストイック。お点前を姿勢を正して眺めているだけで、不思議と気持ちが落ち着いてくる。
中村によると、武芸のように丹田を意識してお点前をすることで、自身の気を高め、生命力を賦活させる効果があるという。「戦国時代、武将は戦に出る前にお茶を点て、気付けとして飲んだ。茶道を通じて丹田を意識し精神を整えてもらいたい」。横浜を基盤として全国さまざまな場所に出向き、武家茶道の世界を紹介する中村。シーサイダーでもおなじみの横濱帆布鞄の代表取締役、鈴木幸生は中村の門人で、海岸通りにある横濱帆布鞄万国橋本店内では年に数回お茶会が開かれているそうだ。武家茶道についてもっと知りたくなった人はぜひホームページをチェックされたい。
壺月遠州流禅茶道宗家